2006-01-01から1ヶ月間の記事一覧

板倉鞆音、そして玉置保巳、天野忠

――「僕がしばしばどんなに感動させられるか知っておいでか」 1 前々回、板倉鞆音訳のケストナーの詩「雨の十一月」に打たれた山田稔が、今でもケストナー詩集が入手可能かどうか、旧知のドイツ文学者、玉置保巳に手紙で問い合わせた、と書いた。山田が玉置…

中井英夫

初めて読んだ中井英夫の本は何だったのだろう。三一書房版の『中井英夫作品集』だったか、潮新書版の『黒衣の短歌史』だったか。おそらく前者だったろうと思う。 学生時代、横浜の京浜急行沿線に住んでいた私は、週末になると伊勢佐木町の有隣堂や野毛坂の古…

板倉鞆音、そして山田稔

1「私は心に屈託することがあると、いつも木下夕爾詩集を取り出して、好きな詩を声を出して朗読する。すると遠くにいるなつかしい友人から久しぶりにうれしいたよりをもらったような気持ちになり、……」 と書いたのは河盛好蔵だった(前回参照)。詩には人の…

含羞の人――木下夕爾

1 飯田龍太に『思い浮ぶこと』というエッセイ集がある*1。なかに、本の標題と同じ「思い浮ぶこと」というエッセイがあり、副題に「木下夕爾」とある。 「いつになく、ながい梅雨であった。/立秋が過ぎると、はげしい残暑がいつまでもつづいた」と書き出さ…