2010-05-01から1ヶ月間の記事一覧

新訳『賜物』あるいは『記憶よ、語れ』――ナボコフ再訪(5)

ナボコフの作品は短篇、長篇にかかわらずいずれも大好きだけれども、もっとも鍾愛する作品はといえば、まず『記憶よ、語れ』に指を屈する。はじめてナボコフの作品にふれたのが十代の終わり、英語の授業で読んだFirst Loveだった。大津栄一郎注釈のFIRST LOV…

長谷川四郎のソング

5月7日金曜の夕刻、不忍の旧安田楠雄邸で催された<音楽と朗読の夕べ・長谷川四郎のソング>に出かけた。南陀楼綾繁さんの企画で、長谷川四郎の詩や短篇小説を黒テントの俳優・久保恒雄さんが朗読し、詩に曲をつけた平岩佐和子さんがピアノを演奏しながら…

もう一つの「素面の告白」――『榛地和装本 終篇』

藤田三男さんの『榛地和装本 終篇』の面白いのは、これがこの手練の編集者の一種の自伝になっているところにある。こう書くと首を傾げる読者もいるかもしれない。これは文藝編集者の文壇回想録の一種ではないかと。むろん一面ではそうに違いないけれども、そ…