2011-01-01から1ヶ月間の記事一覧

三島由紀夫の「素面」

藤田三男さんは河出書房の編集者時代に三島由紀夫の本を何冊も手がけていられる。編集者として見た三島由紀夫の「素面」を書きとめた文章は、装丁を手がけた本の書影とともに『榛地和装本』『榛地和装本 終篇』の二冊の著書に収められているけれども、なかで…

眼の中を墜ちゆく機影

新年歌会始の歌が発表された。今年のお題は「葉」である。皇后美智子妃の、 おほかたの枯葉は枝に残りつつ今日まんさくの花ひとつ咲く は歌境にこれといって目新しさはないが、いかにも美智子妃らしい歌である。まんさくの黄色い花が枝にひとつ早くもひらい…

ヴィヨンの小指

昨年暮れに放映された『坂の上の雲』で、正岡子規の臨終の場面が描かれた。このドラマで子規の文業の偉大さ大きさはそれほど伝わらなかったかもしれないが、人間としての正岡升の大きさは(その卑小さとともに)見ているわたしを強く打った。子規の晩年を庇…