2012-10-01から1ヶ月間の記事一覧

文体について(その3)――丸谷才一「批評家としての谷崎松子」

前々回、「文体について(その1)」と題した文章を掲載するまでに、ひと月あまり間があいた。更新が滞ったのは、その間、ちょっと気の張る原稿を書いていたためだった。気の張るというのは、柄にもなく日本の古典文学をテーマにした原稿だったことにくわえ、…

文体について(その2)――片岡義男『日本語と英語』を読む(2)

片岡義男は、ハワイのマウイ島生れの日系二世の父親と滋賀県に生れた日本人の母親のもとで、幼児期からバイリンガルで育った。英語と日本語をほぼひとしく話したが、《子供の僕の核心に、より深く届いていたほうがドミナントだったと考えるなら、それは英語…

文体について(その1)――片岡義男『日本語と英語』を読む

「世のなかは絶えまのない動きのなかにあり、変化は最終的には常に進歩の方向にあるのです」 こういう文章をわたしたちはよく見かける。評論や論文などの書物のなかであったり、演説で耳にしたりする。そして、こういう言い方をわたしたちはすこしも怪しまな…