2009-11-01から1ヶ月間の記事一覧

「オリジナル・オブ・ローラ」をごらん!

驚いた。近頃新刊書を手にして驚くことは殆どなくなったけれど、この本にはびっくりした。 Vladimir Nabokov, The Original of Laura, Knopf. ウラジーミル・ナボコフの未刊の遺作(小説)である。 頁の上半分に手書きの英文が書かれたインデックスカードが…

人衆ければ即ち狼を食らう・補遺

さて、前々回「人衆ければ即ち狼を食らう――森鴎外と久保忠夫」(id:qfwfq:20091108)の末尾に、わたしは《仙台のバスではいまも「ヤギヤマイレグチ」と言ったり、デパートではいまも「缶入れですね」とか「十箇入れ」ですね、と言っているのだろうか。こんど…

少し距離をおいて――喪失と哀悼

「小津の映画は、つねに最小限の方法をもって、同じような人々の同じ物語を、同じ街東京を舞台に物語る。彼の四十余年にわたる作品史は、日本の生活の変貌の記録である。描かれるのは、日本の家庭の緩慢な崩壊と、国民のアイデンティティの衰退だ。だが、進…

人衆ければ即ち狼を食らう――森鴎外と久保忠夫

『明治文壇の人々』から馬場孤蝶の回想をひとつ抜書きすると――。 大正七、八年頃のこと、東京日日新聞で国詩を募集した。当選したある詩のなかに「……するより仕方がない」という句があった(国詩とは一般に詩歌とくに和歌を指すが、ここでは何の詩型かは不明…