2008-09-01から1ヶ月間の記事一覧

心のうちのすさまじきかな――追悼西郷信綱

紫式部が清少納言をライバル視していたことはよく知られている。『紫式部日記』に清少納言を名指しで辛辣に批判した箇所がある。 《清少納言こそ、したり顔にいみじうはべりける人。さばかりさかしだち、まな書きちらしてはべるほども、よく見れば、まだいと…

わたしの心はかなしいのに

前々回、斎藤美奈子の時評をめぐって感想をしたためた。わたしの意図したのは時評の批評であったが、そこに取り上げられている小説を読みもせずにつまらないという印象を与えるような書き方は如何なものか、とのコメントをいただいた。そのことについては手…

しかしジャスミンは咲いている

ほとんど要約を許さぬ文章というものがある。桶谷秀昭の「含羞の文学」*1という短いエッセイ――というよりもこれは随想というに相応しいが――もそのひとつで、これについて触れようとすればほぼ全文を書き写すしかないが、そうもゆかないので覚束ないけれども…