2011-08-01から1ヶ月間の記事一覧

期待と落胆――西村賢太論序説

西村賢太の小説の特長は、まずなによりもその文体にある。西村の独特の文体を形成している要素のひとつに、よく指摘されるように「西村語」とでも呼んでみたい頻出する用語が挙げられる。これは西村の小説のほとんどすべてに共通する語法である。 いくつか具…

テキストのヴェネツィア

旅行というものが好きではない。準備のことを考えるだけで意気阻喪し、うんざりしてしまう。かつて仕事でフランクフルトからパリ、アムステルダムへと旅したことは、以前ここで書いたことがある。ほかに外国へ行ったのは、二十代の終りに行ったマンハッタン…