2014-09-01から1ヶ月間の記事一覧

十字架には早すぎる――堀江敏幸と杉本秀太郎

前回の末尾に予告した、文庫解説にさらに著者がコメントするという珍しいもう一例は、堀江敏幸の『回送電車』(中公文庫、2008)。解説は杉本秀太郎である。 杉本秀太郎の随筆をわたしは長年愛読してきた。杉本さんは小説を書かないが、このふたりの書き物に…

天知る地知る

岩波の「図書」8月号から斎藤美奈子の新連載「文庫解説を読む」が始まった。第1回の冒頭に岩井克人の『ヴェニスの商人の資本論』のあとがきが取り上げられていて、おおっと思った。わたしも岩井のそのあとがきについては以前ここで書いたなあと思って検索し…

黄金の釘一つ打つ――『岩本素白 人と作品』

以前ここで来嶋靖生さんの評伝『岩本素白』が河出書房新社より刊行されると書いた*1。それは予定どおり無事刊行され、大方の好評を博したようである。微力ながら同書の編集に関わったものとして欣懐を禁じ得ない。「槻の木」八月号に掲載された小文を以下に…