2015-08-01から1ヶ月間の記事一覧

山田稔『天野さんの傘』とその他のあれこれ

山田稔さんの新刊『天野さんの傘』をようやく読んだ。奥付の刊行日を見ると2015年7月18日発行となっている。その前後に本書の刊行を知り、神保町の東京堂書店に足を運んだ。いままでならレジ前の新刊平台に積まれているはずだった。しかし、そこには見当た…

戦争は懐かしい――玉居子精宏『戦争小説家 古山高麗雄伝』を読む

戦後70年といわれて、いまの若い人はどのような感想をもつのだろうか。二十歳の若者にとって、昭和20年は生れる50年前になる。わたしは昭和26年、1951年の生れだから50年前といえば1901年。日露戦争の始まる3年前になる。ロシアは革命の前、帝政時代である…

ラセラスは、余りに幸福すぎたので……  悼詞・鶴見俊輔

永井龍男に「朝霧」という短篇小説がある。“短篇の名手”と称される永井龍男の小説のなかでも代表的な一篇に数えられる名篇である(昭和24年の作)。 語り手(名を「池」という)が学生時代の友人のうちを訪ね、そこで出会った友人の父親(X氏)と母親につい…