うっすらとした傷つき——『多聞さんのおかしなともだち』について

 

 べつにそれに費やす時間の余裕がないというわけではなく、むしろ暇だけはだれかとシェアしたいほど持て余しているのだけれど、ブログになにか書こうという気がいっこうに起こらないのはなぜだろう。気がつくと盆暮れどころか年に一度書くか書かぬかというていたらくになって久しい。

 自分のブログを見ることはめったにないが、先日ひさしぶりに覗いてみたら、ある日のページビュー数だけが突出して多い。何事ならんと思ったら成瀬巳喜男監督の『めし』について書いた記事を見に来られたようで、たまたまBSで放映された『めし』を御覧になった方が検索して訪れたらしい。なるほど。

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 だからといって多くの人に関心をもたれそうな記事を書こうという殊勝な気には到底ならない。自分の関心のあることだけを、それのみを気儘に書くだけである。

 あだしごとはさておき。

 昨日、「おや」と思う記事を見た。ブログではなく新聞記事である。「朝日新聞」9月24日夕刊。文化欄ではなく、いわゆる三面記事と呼ばれる社会面に大きなスペースをとって掲載されていた。女性どうしの同性カップルのもとで育った女子高校生の話を描いたまんがらしい。

 彼女の名は内日(うつい)。同性カップルの子として、さまざまな偏見にさらされている。「30歳近くになった内日の前に、不思議な生き物が現れて――」というなりゆきで、セクシュアルマイノリティを描いたまんがというだけなら、それほど強い興味をひかなかったかもしれない。しかし、自身もおなじ境遇のもとで育ったという作者の

「大人の期待に応えようと求められるものを演じてしまう子どもの『うっすらとした傷つき』を読みたかったし、描きたかった」

ということばと、引用されている主人公らしい女性を描いたコマのタッチで読んでみたいと思った。トイ・ヨウ作『多聞さんのおかしなともだち』(KADOKAWA刊)。

 それにしても、なぜ社会面にこの記事が大きく載ったのだろう。書いたのは花房吾早子という記者で、検索してみると以前「朝日新聞デジタル」に掲載されていた記事だった(9月6日付)。この作品によせる記者の熱意のようなものが伝わってきた。紙面へ再掲載されて読むことができたのは幸いだった。

 さらに検索をつづけると、コミックナタリーというサイトに作者と脚本家の吉田恵里香の対談が載っていた*1。 

 吉田恵里香は『恋せぬふたり』や『虎に翼』の作者で、マイノリティ、被差別者に関心を寄せてきた脚本家だ。詳しくは、当サイトの対談をお読みいただきたいが、注目したのは、まんがのなかで『キッズ・オールライト』について触れられているシーンが印象に残った、と吉田恵里香が発言していることだった(なお、このサイトで本作の第1話、約50ページ分を読むことができる)。

キッズ・オールライト』は、アネット・ベニングジュリアン・ムーア同性カップルとその子どもたちのファミリードラマだ。わたしも好きな作品で、監督はリサ・チョロデンコ。まえにここで取り上げた『オリーヴ・キタリッジ』のディレクターだ。


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『多聞さんのおかしなともだち』に『恋せぬふたり』それに『キッズ・オールライト』が一本の線でつながる。

『多聞さん』については、注文した本が届いたらまた書くことにしよう。