人生足別離――じゃあね


六月二十四日、同僚がこの世を去った。七年間おなじ職場ではたらいた。高校大学とホッケーの選手だった。享年七十五。
七月五日、詩人がこの世を去った。二十代で初めて会ったボヘミアンだった。「大鰐通り」という素敵な小説を翻訳した。享年八十三。
七月六日、小さな生き物がこの世を去った。畏敬する知人が慈しんだ、神の与え給うたいとけない生き物だった。享年十八。


人生足別離


わたしはといえば、紙一重でこちらの世界にとどまった(はずだ、いまのところは)。
さよならさよならさよなら。詩才のない凡人は愛誦する詩を引くしか能がない。



  じゃあね


思い出しておくれ
あの日のこと
楽しかったあの日のこと
けれどそれももう過ぎ去って
じゃあね


ひとりぼっちはこわいけど
きみにはきみの明日がある
どこか見知らぬ宇宙のかなたで
また会うこともあるかもしれない
じゃあね
もうふり返らなくていいんだよ
さよならよりもさりげなく
じゃあね じゃあね……


忘れちゃっておくれ
あの日のこと
くやしかったあの日のこと
けれどそれももう過ぎ去って
じゃあね
年をとるのはこわいけど
ぼくにはぼくの日々がある


いつか夜明けの夢のはざまで
また会うこともあるかもしれない
じゃあね
もうふり返らなくていいんだよ
さよならよりもきっぱりと
じゃあね じゃあね……