2006-09-10から1日間の記事一覧

けふといふ日――魚眠洞余聞

1 昭和三十年四月十九日の午前十時頃、久保忠夫は馬込の室生犀星宅を初めて訪れた。犀星から届いた前月二十三日附けの草木屋製の葉書に「御出京の折はお立ちより下さい、午前なら必ず居ります」と書かれていたからである。東北大学文学部国文科の大学院に学…